システム開発大手の富士ソフトを巡り、今まさに熾烈な買収合戦が繰り広げられている。独立系として成長してきた同社が、米国の投資ファンドKKRとベインキャピタルから5600億円を超える買収提案が飛び交う状況になっている。
今回は2024年12月20日までの富士ソフト買収劇の経緯をまとめた記事になる。
まず、買収合戦の経緯として、富士ソフトが大株主の3Dインベストメント・パートナーズ(以下3D)への対応に苦心し、非公開化を検討していたことがある。
2021/12/13頃、3Dが富士ソフト株の9.3%を保有していることが判明。
2022年には20%ほどまで買い増し、3月の定時株主総会、12月の臨時株主総会では3Dが推す社外取締役の選任を株主提案。12月には3Dの推薦する社外取締役が2名選定される。
2023年の8月頃には3Dが株式の非公開化を提案。富士ソフトは社外取締役6名で構成される特別委員会を設置し、非公開提案の検討を開始。
2024年2月、3Dが株主提案。非公開化のプロセスにおける問題点の指摘、非公開化提案を否決した場合の750億円の自己株取得の提案。富士ソフトの企業価値最大化に向けて| プレゼンテーション
2年間半、3Dは富士ソフトに対し不動産の有効活用、創業家中心の企業統治の改善、市場評価が低い親子上場の解消等の企業価値向上策を求め、社外取締役の推薦等の株主提案をしてきた。これらの3Dへの対応に苦心した富士ソフトが、非公開化で単一株主となる方が長期の成長戦略に取り組みやすいと判断したとみられる。
その中で富士ソフトの非公開化案件が動き出す。
①2024/8/8 投資ファンドKKRが1株8800円、総額5600億円で富士ソフトへのTOBを発表。https://www.fsi.co.jp/company/news/2024/20240808_1.pdf
同日、富士ソフトがKKRのTOB案に賛同の意見表明及び応募推奨を発表。
https://www.fsi.co.jp/company/news/2024/20240808_2.pdf
②2024/9/3 投資ファンドベインキャピタルが富士ソフトに対し買収提案。KKR案を上回る1株9200ー9300円、総額約6000億円規模での提案。BC_Code9749_02092024.pdf
同日、富士ソフトは正式に法的拘束力のある提案があればKKRとの比較含め慎重に対応する旨を発表。
2024/9/4 KKRによる富士ソフトに対するTOB開始。
➂2024/10/11 ベインが富士ソフトに対しTOBの正式提案。富士ソフト社の賛同が得られれば、一株9450円でTOBを開始予定と発表。
富士ソフトはベイン案を検討し、今後意見変更の可能性があると発表。
2024/11/5 KKRの第一回TOB完了。発行済み株式33.9%を確保。(事前に応募契約をしていた3DとFarallon Capital Manegimentより計32.68%取得。) これにより、ベインは単独での富士ソフト株の非公開化が不可能になる。(非公開化に必要なスクイーズアウトに臨時株主総会での3分の2以上の賛成が必要なため)20241108-kkr-acquires-over-a-third-of-fuji-soft-with-completion-of-first-stage-of-tender-offer.pdf
④2024/11/19 KKRが第2回TOBの開始を発表。一株9451円とベイン案より高い価格を提示。FK株式会社による富士ソフト株式会社(証券コード:9749)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
同日 富士ソフトがKKR第2回TOBに対し、賛及び応募推奨。(追加)FK株式会社による当社株券等に対する第2回公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ
⑤2024/12/11 ベインが富士ソフトに対するTOB価格を再提示。旧提案の一株9450円から9600円に引き上げ。BCP_9749_11122024-jp1.pdf
2024/12/17 富士ソフトがベイン修正TOB案に反対表明。株式会社BCJ-88による当社株券等に対する公開買付けに係る当社取締役会の意見(反対)に関するお知らせ
2018/12/18 ベイン、KKRの第二回TOBが下限(19.25%)に達せず不成立になった場合、富士ソフトに対し「同意なき買収」に踏み切る旨の発表。富士ソフト株式会社株式(証券コード:9749)に対する公開買付けの買付条件等の変更に関するお知らせ(賛同に係る前提条件の放棄等).pdf
2024/12/19 KKRがTOB締め切りを12/19から1/9に延長。
8月8日のKKRのTOB発表から2024/12/20現在まで、KKRとベインの富士ソフトをめぐる買収合戦が繰り広げられている。。12/19時点で、KKRの第二回TOBは下限の19.25%に届いていないと見られ、1/9に買収成立するかは注目である。成立しない場合、ベインのTOBに対抗して第三回TOBを行うのか、もしくはベインのスクイーズアウトに応じるのか等、KKRの対応に注目したい。
今後更新予定の記事
・なぜKKRとベインは富士ソフト買収に乗り出したのか
・買収合戦の結果と要因考察
コメント